血は水よりも

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故郷に戻ってたくさんの植物に囲まれた実家の前に立った時、血って恐ろしいなと思いました。

そうだ、私の母は「みどりのゆび」の持ち主だった。

母の手にかかればどんな植物もいきいきと成長していく。まるで相思相愛。しかも彼女は私のように育て方を念入りに調べたりしないにもかかわらず。くっ・・・なんちゅう敗北感。

二人の間にはちょっとした確執があって、今でも私は彼女が苦手だ。いや、恐れていると言ったほうがいいかもしれない。話をするときはいつも緊張して指先が冷たくなる。

けれどこの日、二人並んでぽつぽつと庭の話をしている間だけは、かつて母親に守られていた幼い頃の安心感のような、なんとも形容しがたい感覚がよみがえってきて鼻の奥がつんとした。それと同時に「このひと、こんなに小さかったかな・・・」とも。そうか、私は母の育てる植物の美しさに生まれたときから触れていたんだ。こんな風に感じるのは二人とも歳を重ねたからなんでしょう。

切っても切れないつながりを受け入れるには、もう少し時間がかかるかもしれないけれど、その日は近いような気がする。母から受け継いだ植物を愛する心を大切にしていこうと思える自分がいるから。